6月 2022

ビールの歴史について③

ビールの歴史について③

こんにちは、メイクラフトです。関東地方は今週梅雨明けをしました。過去最早の梅雨明けだったようです。6月にも関わらず連日の猛暑で体にこたえる日々が続いていますが、みなさんも熱中症にはくれぐれも気を付けてください。さて、前回は「ビールの歴史について②」のお話しをしました。産業革命時代のビール造りの機械化などを振り返りましたが、今回は「ビールの歴史について③」として、禁酒法時代から今日にいたるまでの「ビールの100年」を振り返っていきたいと思います。 産業革命によってビール造りが機械化されたことで、ビール市場が急速に拡大しました。この頃に醸造されていた多くのビールは、今日で飲まれているビールのアルコール度数より高かったそうです。アルコール市場が急速に拡大したことで、労働者がアルコール依存症になるケースが多発し、アメリカ政府はアルコール醸造と販売の規制に乗り出したのです。こうして1920年~1933年の13年間に渡りアメリカでは「禁酒法」の暗い時代がやってきます。 それまで数千あったビール醸造所の多くが廃業に追い込まれ、残りのビールメーカーは生き残りを掛けて、アルコール度数が1%未満の「ニアビール」というビールを造ったり、クッキーを作るための「麦芽シロップ」などを生産していました。この時代に広く普及した飲物の1つに「ジンジャエール」などがあります。禁酒法によりアルコール依存者を劇的に減らしたことに成功した一方で、ストレス増加による暴力犯罪の増加を引き起こしたとも言われています。実際には多くの人々がアルコールを求めてカナダやメキシコに行くようになったり、マフィアが違法なアルコール売上で莫大な利益を生みだしたいと、社会的な影響は計り知れませんでした。 この頃のビールが現代のビール産業にもたらした物の1つに「容器」があります。禁酒法以前のビールは樽での流通が一般的で、主に「サルーン」と言われる西部風のBARで提供されていました。ただし禁酒法の時代になると、サルーンでのアルコール提供は禁止されビールを密かに流通されるために「瓶」での取引されることが始まります。ちなみに今ではお馴染みの茶色の瓶は、紫外線などの有害な光からビールの劣化を防ぐために茶色のビール瓶は1912年にアメリカで初めて使用され、今では世界中でビール瓶に茶色の瓶が多く採用されています。 そして1930年代になるとアメリカでは缶ビールが登場し、更に市場規模を拡大していきます。1940年代には禁酒法以前の醸造量まで復活を遂げ、1960年第後半になるとアメリカでは初めて缶ビールが瓶ビールを上回ります。こうして絶え間ない成長をこの100年で遂げたビール産業は、21世紀に入るとビール市場は更に拡大し2022年に世界のビール市場規模は60兆円以上にまで達しました。現在、欧米を中心にこの日本でも、特に若い意欲的な飲用者の間で、従来のビールやラム酒とは異なるモダンなビールへの嗜好のシフトが進んでいて、このクラフトビールは世界中の人々を魅了しています。 全3回に渡り「ビールの歴史について」を振り返ってきましたが、人類が作った最も古い飲み物の1つビールは様々な歴史を経て現代に伝わってきている事が分かり、改めてビールの魅力を再認識することができました。今回は禁酒法時代以降の2つの世界大戦時のビールや、日本におけるビールの歴史については情報量が多いために割愛させて頂きましたが、また次回以降にお届けできたらと思っています。 前回の記事「ビールの歴史について②」はこちらから 業務用クラフトビール専門店 MAYCRAFTはこちらから ...

ビールの歴史②

ビールの歴史について②

こんにちは、メイクラフトです。雨模様の日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。最近はマスクをして人に会う事が日常になってしまいましたが、マスクをしていると相手の表情が分からないことが多いと思います。そんな時にさり気なくマスクを少しだけ外して顔を見てもらうことを心掛けています。そうすると相手の方も表情が見えて安心するかもしれません。さて、先週は「ビールの歴史について①」についてお話ししました。ビールの起源から修道院で作られるようになるまでをお話ししましたが、今回はその続き「ビールの歴史について②」として、16世紀から19世紀のビールを振り返ります。 紀元前から長年に渡り人々に親しまれてきたビールは、16世紀になるとドイツでビールの品質向上を目的に「ビール純粋令」という法令ができました。ビールが多くの地域で醸造されるようになる一方で、ビールと呼べないずさんなビール造りが横行していたドイツ。品質管理に課題を抱えていたのです。そこで時の公室が「ビール造りは大麦・ホップ・水のみを原料としなければならない」というルールを作り、更に1㍑あたりの価格制限も設けたのです。このビール純粋令はドイツ国内のみのルールでしたが、現存する食品に関する法律としては世界最古になります。今でもドイツで造られるビールの多くは、このビール純粋令に準じたビール造りをしています。 その後18世紀に起こった産業革命により、それまで手作業で造られていたビールが機械による醸造に変わっていきます。開発された蒸気機関によりビールの大量生産が可能になったのです。中でも大きかったことが温度計の発明と冷却器が登場し長期保存を可能にする低温殺菌法(パストリゼーション)が発明されたことです。簡単に説明する完成したビールの菌を60度程の温度帯で殺菌することで再発酵を防ぎ安定した品質のビールを長持ちさせる技術のことです。今日の飲料業界ではあたりまえになった技術ですが、牛乳や大手ビールは流通面から品質を一定に保つ必要性のあるために、この低温殺菌法を活用しています。そしてこの18世紀ごろに冷却器が誕生したおかげで広く普及することになったのが下面発酵ビール(ラガー)です。季節の気温によりビールの味が変わってしまうことから、それまでは一年を通じてビール造りができませんでした。そこでこの冷却器を使うことで、一年中安定したビールが造れるようになりました。 19世紀後半に入るとビール市場が更に拡大し、それまでの国内から海外に広く輸出され、その頃に日本にもビールが輸入されるようになりました。産業革命以降の食品業界の成長は著しく、巨大ビールメーカー1つにアンハイザー・ブッシュのちの「バドワイザー」や「ハイネケン」が誕生したのもこの頃です。ちなみにアメリカでは、あの「コカ・コーラ」やケチャップの「ハインツ」などもこの頃に誕生しました。18世紀~19世後半に起こった産業革命によって人々にもたらされた事の1つに食生活の変化です。それまでは昼食を食べるために人々は自宅に帰り食事をしていた文化が、家から遠く離れた工場で働くことになり、ランチパックや近くの売店で食事を購入するようになったのです。より食品に品質が求められる時代が訪れ、ビール造りも次の時代に突入してきます。 次回は20世紀初頭の禁酒法時代から今日にいたるまでの「ビールの100年」を振り返っていきたいと思います。次回につづく…… 前回の記事「ビールの歴史について①」はこちらから 業務用クラフトビール専門店 MAYCRAFTはこちらから ...

クラフトビールと歴史

ビールの歴史について①

こんにちはメイクラフトです。すっかり梅雨真っただ中になりましたが、今年の梅雨は例年に比べて雨が多いようです。外出される際はお天気を気にしつつ、傘をお忘れなくお過ごしください。さて、前回は「クラフトビールとお料理のペアリング」をテーマにお話ししました。ジメジメするこの時期は、さっぱりしたお料理が食べたくなります。そんなお料理には酸味のあるフルーツビールなどもおすすめです。さて、今回のテーマは「ビールの歴史」です。今週から全3回に渡りお話ししたいと思います。 ビールに関する最新の歴史研究を調べてみると、ビールは人類が作った最も古い飲み物の1つのようです。その起源は紀元前9500年頃の新石器時代まで遡り、当時の人々が土地を耕作する方法から偶発的に穀物が発酵したことがビールの夜明けとされています。ビールは発酵食品で当時は野生酵母によって自然発酵する可能性があるため、世界中で独自に開発されました。その後紀元前6000年前頃には壺から天然のストローでビールが飲まれていた証拠が発見され、その飲み方についても驚かされます。あえて現代でもストローでビールを飲むのも楽しいかもしれません。ちなみにそのストローはイネ科の葦(ヨシ)で作られたストローだったとのことです。 現在のように調合された醸造の歴史としては、紀元前4500年頃古代メソポタミア文明が始まりとされています。当時は気温が高いこの地域では生水が衛生的に問題があったことから、安全性と主食の麦から造れたビールは栄養価が高いことから非常に重宝されていました。紀元前3000年頃の古代エジプトではワインが王侯貴族の飲み物であった一方で、ビールは庶民にも楽しまれたと推測されています。いつの時代もビールは大衆の飲み物であることはとても嬉しく感じます。 その後中世ヨーロッパでは宗教的な理由から修道院でビール造りが盛んに行われていました。パンを崇拝していた人々にとって「ビールは液体のパン」と言われていたからです。以前にご紹介した神奈川県のサンクトガーレンは世界でもっとも古くにビール醸造が公式に認められたとされるスイスの修道院「ザンクトガレン修道院」から名前が由来しています。日頃飲んでいるビールが何千年も前から人々の生活の中心にあり、楽しまれてきた飲物だと思うと、その味わいが更に深く歴史と共に身に染みる気がします。 次回につづく…… 前回の記事「クラフトビールとお料理のペアリング」はこちらから 業務用クラフトビール専門店 MAYCRAFTはこちらから ...

クラフトビールとお料理のペアリング

こんにちは、メイクラフトです。今回のテーマは「クラフトビールとお料理のペアリング」です。関東地方は今週梅雨入りをしまして、雨模様の天気が多く朝晩と肌寒い日が続いていますが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。通りの向こうでは紫陽花が咲いていて、毎年この時期を迎えると季節の移ろいを感じ、日本は素晴らしい国だなと感じます。 前回は「海外のクラフトビールから受うる影響」についてお話ししました。先日とある勉強会でクラフトビールの今後について情報交換をした際に、“クラフトビールとお料理の組み合わせ”の話題で盛り上がりました。以前よりワイン×チーズのマリアージュや、日本酒×おつまみ、などの組み合わせがありましたが、クラフトビールでもお料理と合わせることで忘れがたい食体験を提供することができます。「マリアージュとは、お料理とお酒による化学反応で新たな味わいを創造する組み合わせを指し」、「ペリングはお料理とお酒のそれぞれの特徴を生かしつつ満足度を向上させる組み合わせを指す」、と考えています。 日本は食文化が豊かであることから、食中酒としてお酒を楽しむ傾向があり、どんなお料理にも合わせやすいお酒は多くありますが、味わい深いクラフトビールとお料理の組み合わせ次第では破壊力は抜群です。とあるラーメン屋さんでは、ゆず系のラーメンに合わせる形で、ゆずビールを提供されているようで、お話を聞いているだけで美味しそうなイメージが湧きます。焼肉とアンバーエール…ハンバーガーとIPA…餃子とピルスナーなども相性がよさそうです。一方で食後にショットバーなどでゆっくりとお酒を楽しむシーンにおいても、素敵なグラスに注がれたクラフトビールもまた違ったビールの楽しみ方の1つだと思います。ドライフルーツとクラフトビールの組み合わせも相性がいい物がありそうです。 以前に和食に合わせるビールをテーマに各ビールスタイルを集めて試飲会を実施したことがありました。結論から申し上げますと各ビールスタイルの中でも味の個性が細かく分かれていて、必ずしもこのお料理にはこのスタイルが合うという事が言えないことが分かりました。ただし相性のよいペアリングを見つけた時の感動は大きく忘れがたい体験になりました。ちなみにその際に試飲してみた組み合わせの中で印象的だったのが、お鮨×南信州のゴールデンエール、山口地ビールのゆずエールでした。お鮨のシャリに含まれている酢とゆずの相性、南信州ゴールデンエールのライトがお鮨に寄り添う感じで相乗効果を引き出していました。 お店自慢のお料理に合うクラフトビールを提供することで、そのお店だけでしか味わうことができない価値となり、お客様に満足いただけいるお手伝いができたらと思っています。これからもクラフトビールとお料理のペアリングの可能性を探りつつお伝えできればと思っています。 南信州 ゴールデンエール | 業務用クラフトビール専門店 メイクラフト (maycraft.beer) 山口地ビール 萩ゆずエール | 業務用クラフトビール専門店 メイクラフト (maycraft.beer) ...

海外のクラフトビールから受ける影響

こんにちはメイクラフトです。今回のテーマは「海外のクラフトビールから受ける影響」です。少しずつ梅雨が近づいてきて、お天気が変わりやすい日が続いています。ここ数年のコロナ禍による外出自粛を考えると、例年以上に季節の移ろいを感じる2022年です。 前回は「クラフトビールがもたらす健康とワクワク感」のお話しをしました。そんな矢先にワクワクするようなイベントに行ってきました。横田基地で開催された日米友好祭。毎年5月後半頃に行われるこの日米友好祭はコロナ禍による中止も続き、約3年ぶりの開催となりました。自衛隊や米軍機など約20機以上の戦闘機を間近でみることができ、日本にいながらアメリカを感じることができるイベントの1つです。横田基地内に入ると屋台も数十店舗出店されていて、さっそく販売されていたビールをチェックしてみました。缶を中心に一部ドラフトの生ビールも販売されていました。ふと気が付いたのが、アルコール類はほぼビールのみの販売でした。フードについては、ステーキ、メキシカン、チキン、ポテト、ピザ等、アメリカでよく食べられている大衆料理がほとんどでした。どれもビールとの相性は抜群で、お腹がいっぱいになる料理に圧倒されました。ビールは大堂のバドワイザーやミラーを中心に、一部アメリカのクラフトビールも販売されていて、多くの人がビールを片手に楽しんでいる様子が印象的でした。コロナ禍によってここ数年イベントが相次いで中止になってしまったことを思うと、屋外でビールを飲んで楽しんでいる人々を見ると、イベントが戻ってきた印象を受けて嬉しい気持ちになりました。 アメリカのクラフトビールは今では数多くの種類が日本に輸入されており、目にすることも多くなってきたかと思いますが、アメリカのクラフトビールの方向性が日本のクラフトビールに与えている影響も多くあると感じています。クラフトビールの魅力の1つに個性的な味わいがありますが、それを象徴するような凝ったボトル(瓶)や缶のデザインが増えたような印象を受けています。最近ではアメリカのクラフトビールも日本で買える機会も非常に多くなりましたが、どれも個性的なデザインに目を奪われます。可愛いボトルのデザインやお洒落な缶のデザインを飲みながら楽しめると一層感動が増すかもしれません。今後、味だけではなく、いつ・どこで・誰が・どのような想いでお酒を造ったか、そんなストーリーを聞きながら、お酒やお料理を楽しめることで、最高の飲食体験を作ることができるかもしれません。世界有数の食文化が豊かな日本とクラフトビールの融合が作り出す未来が、もう目の前にやってきているのかもしれません。 業務用クラフトビール専門店 MAYCRAFTはこちらから ...